経済学?法律学研究

経済学?法律学研究からのアプローチ

社会的排除による権利侵害への憲法理論に関する横断的比較法的研究

淡路 智典  准教授
経営法学部 経営法学科
淡路 智典  准教授

研究開始時の研究の概要

社会学的文脈において、排除構造に着目して差別などの問題を把握?摘発するものとして「社会的排除」という考え方がある。本研究はこの「社会的排除」という分析視点を利用して、これまで憲法上の権利侵害とみなされていなかった差別問題を可視化し、それに由来する差別を救済する法的な枠組作りを目指す。その際に、欧州や米国の事例や救済策を調べ、それらの議論を踏まえたうえで、日本国憲法論として扱える「社会的排除」論の構築を目指す。

研究実績の概要

2019年度に行われた研究会により、法学における「社会的排除」に関して基礎的な共通理解が出来上がったので、2020年度はより具体的で実質的な問題の究明にあてた。人権と社会的排除の問題を考える基礎として、社会的排除を政治的な問題ではなく法的な問題として捉える可能性を、つまり裁判によって実現可能な法的主張として捉える可能性について、研究代表の淡路智典(東北文化学園大学)が報告した。その研究にて、社会的排除の問題を憲法25条(生存権)のみならず憲法14条(法の下の平等)の観点を加えることにより差別禁止という観点からの捉えなせることを指摘した。(2021年度に成文堂から刊行される『人権と社会的排除』という論文集に「法的課題としての社会的排除」という題名にて収録される。)また教育や福祉といった具体的な場面での社会的排除の扱われ方についても数々の成果を出すことができた。具体的には外国にルーツを持つ子どもたちに対する教育の場面や、精神障害者の自己決定権などについて研究業績が発表された。

しかし、昨年度から続く新型コロナの影響が長引き、非常事態宣言などにより長距離の移動が難しい状況が続き難しい状況であったため、研究会を開催することはできなかった。ただし研究者各自でオンライン環境を整え、必要なスキルを修得し、数回の打ち合わせを行ったので本格的に研究会のオンライン化の目途が立った。新型コロナの情勢に合わせて、対面での研究会とオンライン研究会を使い分けを予定している。